雀宮の梨
梨果(りか)ちゃん誕生記
雀宮地域の西部、南北に連なる台地に在る「針ケ谷町」は、上坪、中坪、下坪の3自治会からなり、畑作農家や果樹・植木などの園芸農家が点在しています。
そのうち、特産の梨(なし)園を営んでる農家は16戸もあり、延べ栽培面積は約20ヘクタールに及び、可憐な白い花を咲かせる梨(なし)園を、随所に見ることができます。
今回は、その「梨(なし)園」を経営されている青柳隆一さんのご協力を頂き、
梨果(りか)ちゃん の生い立ちを追ってみます。
梨果ちゃんカレンダー
梨の栽培は、年間を通して切れ目なく仕事がありますが、春は主に「晩霜対策、摘蕾及び芽かき」次いで「人工受粉作業」があります。
最初に咲く花は新高、新興、それから豊水、幸水ですが、早く花が咲く種類ほど結実が遅く、後から咲く幸水が先に出荷されるという不思議な果実です。
長十郎・新興は、豊水・幸水などの枝に接木され、接木した枝には結実させずに受粉用に使用され、上手く受粉されると、丸く格好の良い(ということは味も良い)梨ができるそうです。
3月の作業
接木作業(梨は同一品種では受精しないので異品種を接木します。垂直に上に伸びた枝が受粉作業の花用に接木したものです。)
4月の作業
1.人工受粉作業(ここでは人の手とみつばちの両方で行っています。)
2.黒星病予防の消毒
4月7日 蕾がふくらみました。
4月17日 花が咲きました。
4月26日 人工受粉作業
ミツバチによる受粉
4月27日 黒星病 防除作業中
5月の作業
1.防雹(ひょう)ネットを張ります。
2.実太りを良くする為の一次摘果(一箇所5~6個着果した梨果ちゃんのうち、形がよく
太いもの1個のみ残し摘果。幸水はこの作業を着果から30日を目安に終わらせます)
3.病害虫防除(アブラムシ、カメムシなどの駆除のため10日に1度位消毒します)
果樹園全体をすっぽり覆ったネット
誕生したばかりの「梨果ちゃん」
摘果作業
摘果作業が終了した状態
6月の作業
1.実太りをよくするための二次摘果(一枝に形がよく太いもの13個を目安に残す)
2.交信撹乱剤の取り付け(性フェロモンの特別な作用により害虫の交尾を阻害する)
二次摘果
交信撹乱剤
7月の作業
1.補正摘果(品質保持のため形の悪いものなどを摘果)
2.新稍管理(次年度に備え、上に伸びた新しい枝を水平に近くなるように導く)
3.病虫害予防
4.土壌・草生管理
補正摘果され地上に転がる梨果ちゃん
新稍誘引(ひもでワイヤーに縛る)
テニスボールぐらいになりました!
8月の作業
1.早生種(幸水)の収穫
2.病虫害の防除
3.落下防止剤の散布
立派に育った梨果ちゃん
収穫状況
☆おいしい「梨」の食べ方 食べる1時間前に冷蔵庫に入れて冷やす。
9月の作業
中生種の収穫(豊水・かおり)
豊 水:水分が豊富で、ジューシーな味わい。
かおり:洋ナシとの混合種で、青梨系の大玉(1kg前後)、香りもある人気の品種。
にいたか(左端)と、かおり。
(中央のかおりは,重さ1㎏)
10月の作業
1.晩生種の収穫(にいたか・にっこり・新興)
にいたか:シャキシャキとした歯ざわりと独特の甘み。日持ちが良い。
にっこり:「豊水」と「にいたか」の混合種で甘みが強い。
「にっこり」の由来」
平成8年、栃木県農業試験場で「豊水」と「にいたか」との混合種として開発された。
観光名所「日光」と、なしを中国語で「り」と呼ぶことから、「にっこり」と命名された。
2.礼肥の施肥
最後の収穫を待つ「にっこり」
(10月20日過ぎから収穫)
1㎏前後の大きな実と味の良さ、とろけるような甘さは、リンゴ・柿などの季節の果物に負けない、高い評価を得ています。
人気抜群の「にっこり」
針は1.175kgを指しています。
洋ナシもあります。
収穫時期の目安です。
4月から始めた「梨果ちゃん誕生記」は、めでたく完結しました。
ご多忙にも拘らず、約7か月積極的にご協力いただいた、「青柳ナシ園」さんに感謝し、ここで終了したいと思います。